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同棲を始めるときの引っ越し|物件選びと契約の注意点

公開日:2026年8月15日

同棲の引っ越しは、一人暮らしの引っ越しとは性質が違います。荷物が二人分になるという物理的な問題以上に、契約を誰の名義で結ぶか、費用をどう分けるか、うまくいかなかったときにどうするかという、事前の合意が必要な項目がいくつも出てきます。ここを曖昧にしたまま部屋を決めてしまい、あとで揉める。そういう相談を私は何度も受けてきました。

楽しい時期に「別れたときの話」をするのは気が進まないものです。それでも、賃貸契約は二人の関係とは別に、法律上の義務として残り続けます。関係が終わっても契約は自動的には終わりません。だからこそ、契約書に署名する前の段階で決めておくべきことがある、というのがこの記事の立場です。物件探しの前に一度読んでおいてください。

同棲の引っ越しで本当に難しいのは物件探しではなく、契約名義・費用分担・解消時の扱いという三つの合意を、部屋を決める前に言葉にしておくことです。

この記事の内容
  1. 物件を探し始める前に、二人で決めておくこと
  2. 二人暮らしの物件選び|間取りと広さの考え方
  3. 契約名義と入居審査|「二人入居可」の確認
  4. 費用の分担と、関係が終わったときの扱い
  5. 同棲の引っ越しまとめ|決めてから部屋を探す

物件を探し始める前に、二人で決めておくこと

内見に行く前に決めておいたほうがいいことがあります。順序を逆にすると、気に入った部屋が出てきた勢いで条件を詰めないまま申し込んでしまい、後から「そんなつもりじゃなかった」が噴き出します。私は、物件情報を見る前に一度この話をしておくことを勧めています。

特に家賃の上限は、数字にしておかないと必ずずれます。二人の収入に差があるとき、片方にとっては妥当でも、もう片方にとっては生活を圧迫する額ということが起きます。一般的な目安として、家賃は手取り収入の3割以内に収めると無理がないと言われますが、二人暮らしの場合は「世帯の手取り合計の3割以内」かつ「各自の負担額が各自の手取りの3割以内」の両方を満たす額を上限にすると安全です。

内見の前に、家賃上限・費用分担・契約名義の三つだけは数字と名前で決めておいてください。部屋を見てから決めると、判断が感情に引っ張られます。

同棲の期間の見通しも、意外と大事です。「二年後に結婚するつもり」なのか「とりあえず一緒に住んでみる」なのかで、選ぶべき物件も、家具にかけるお金も変わります。前者なら結婚後もしばらく住める広さを、後者なら解約しやすい条件を優先する、という判断ができます。どちらが正しいという話ではなく、二人の前提が揃っているかどうかが問題です。

住民票の扱いも、先に話しておくと迷いません。同じ住所に二人で住む場合、住民票の世帯を一つにまとめることも、別々の世帯として登録することもできます。同一世帯にする場合、続柄は「同居人」、事実婚として届け出るなら「未届の妻」「未届の夫」と記載されるのが一般的です。世帯の分け方は国民健康保険料の計算や一部の手当の判定に関わることがあり、どちらが有利かは収入状況によって変わります。判断に迷うときは、転入届を出す前に市区町村の窓口で確認してください。

それから、親への説明をどうするかも先に決めておいたほうがいい項目です。連帯保証人を親に頼む場合、同棲であることを伝えないまま進めるのは難しくなります。保証会社を利用する場合でも、緊急連絡先として親族の連絡先を求められるのが一般的です。ここで話が止まって審査が進まない、というのはよくあるつまずき方です。

二人暮らしの物件選び|間取りと広さの考え方

二人で住む部屋を選ぶとき、家賃の次に判断が分かれるのが間取りです。一人暮らしの延長で考えると1LDKに目が向きますが、生活時間帯が違う二人だと、それが後から効いてくることがあります。

間取り特徴向いているケース
1K・1DK家賃は抑えられるが生活空間が完全に共有短期間の同棲、生活時間帯がほぼ同じ二人
1LDKリビングと寝室が分かれる。同棲で最も多い選択生活時間帯が近く、在宅勤務がない、または片方のみ
2DK築年数が古めだが同エリアの1LDKより安いことが多い個室を確保したいが家賃は抑えたい
2LDK個室+共有リビング。余裕はあるが家賃は上がる在宅勤務が二人、将来の結婚も視野に入れる

※ 家賃の水準は地域差が大きいため、同一エリア内での比較として捉えてください。

私が実際に多く見るのは、1LDKにして後から2DK以上にすればよかったと感じるパターンです。理由はだいたい共通していて、片方が在宅勤務になった、生活リズムがずれて片方の睡眠が削られた、喧嘩したときに離れる場所がない、の三つです。逆に、二人とも外で働いていて帰宅時間も近いなら、1LDKで不足を感じることは少ないようです。

一つでも「一人になれる場所」があるかどうかで、同棲の居心地はかなり変わります。個室が無理なら、せめて広めのリビングを選んでください。

広さの目安としては、二人暮らしなら専有面積40〜50平方メートル程度あると窮屈さを感じにくい、というのが一般的な感覚です。国土交通省の住生活基本計画では、二人世帯の都市居住型誘導居住面積水準を55平方メートルとしていますが、これは「豊かな生活の目安」として示された水準で、これを下回ると住めないという意味ではありません。実際の物件探しでは、家賃との兼ね合いで40平方メートル前後に落ち着くことが多いです。

収納の量も、二人分で見てください。一人暮らし向けの物件はクローゼットが一つしかないことが多く、そこに二人分の衣類を入れるのはまず無理です。内見のときは、押入れやクローゼットの扉を開けて、幅と奥行きを実際に測っておくことをお勧めします。足りないなら収納家具を買うことになりますが、それを置く床面積もあらかじめ見込んでおく必要があります。

立地については、二人の通勤先の中間を取る発想が基本になりますが、機械的に中間点を選ぶと両方が不便になることがあります。通勤時間だけでなく、乗り換え回数や座れるかどうかも含めて比べてください。どちらかが在宅中心なら、外勤側の通勤を優先したほうが生活は安定します。

引っ越し費用の目安を先に知っておくと、この記事の内容も判断しやすくなります。

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契約名義と入居審査|「二人入居可」の確認

同棲でいちばんつまずきやすいのが契約まわりです。まず前提として、賃貸物件には入居できる人数や続柄の条件が定められていることがあります。単身者向けの物件に無断で二人で住むのは契約違反になり、発覚すれば是正を求められたり、最悪の場合は契約解除の理由になり得ます。必ず「二人入居可」「ルームシェア可」の物件を探してください。

婚姻していない二人の入居を認めていない物件も、いまだにあります。オーナーの方針として、関係が解消したときに家賃の支払いが滞る、片方が出て行って残った側が払えなくなる、といったリスクを避けたい、という考え方によるものです。物件を紹介してもらう段階で、同棲であることを不動産会社にきちんと伝えておくのが結果的にいちばん早道です。

契約の形内容注意点
単独名義+同居人届出一方が契約者、他方を同居人として届け出る最も一般的。家賃の支払義務は契約者のみが負う
連名契約(共同賃借)二人とも契約者になる二人とも支払義務を負う。解消時の名義変更が煩雑
一方が契約者+他方が連帯保証人同居人を保証人として立てる同居人が支払義務を負う。関係解消後も残る

※ どの形を認めるかは物件・管理会社によって異なります。契約前に確認してください。

単独名義なら、家賃を法的に請求されるのは契約者だけです。名義人でない側が「払わなくていい」わけではありませんが、それは二人の約束であって、貸主に対する義務ではありません。

実務では単独名義+同居人届出が最も多い形です。手続きが簡単で、解消したときも、残る側が名義人ならそのまま住み続けられます。ただし裏を返せば、名義人でない側は、関係が終わったときにその部屋に住み続ける権利を主張しにくい立場になります。どちらの名義にするかは、収入の安定性だけでなく、「別れたらどちらが残るか」まで見越して決めておくのが現実的です。

入居審査は、契約者となる人の収入と勤務状況が中心に見られます。年収に対する家賃の割合、勤続年数、雇用形態などが判断材料になり、目安として年収の3分の1以内の家賃であれば通りやすいと言われます。片方の収入では審査が厳しい場合、二人の収入を合算して申し込める物件もありますが、これは連名契約が前提になることが多く、扱いは管理会社によって異なります。

家賃債務保証会社の利用を求められる物件も増えています。保証会社を使う場合は、契約者の審査に加えて、緊急連絡先として親族の連絡先を求められるのが一般的です。保証料は初回に家賃の0.5〜1か月分程度、その後は年間で1万円前後、あるいは月額家賃の1〜2パーセント程度という設定が多く見られますが、会社ごとに幅があります。同居人についても申告が必要かどうかは会社によって異なるので、申込書の記入前に確認しておくと手戻りがありません。

契約の前には、宅地建物取引業法にもとづいて宅地建物取引士から重要事項説明を受けます。これは契約者本人に対して行われるものですが、同居する側も同席させてもらうことを強くお勧めします。禁止事項、原状回復の扱い、更新料の有無、解約予告期間といった、後から二人に関わってくる条件がここで説明されるからです。聞いていないと、退去時に「そんな条件だったのか」となります。

費用の分担と、関係が終わったときの扱い

同棲の初期費用は、賃貸の初期費用と引っ越し費用、それに家具家電の購入費で構成されます。金額の目安を整理しておきます。地域や時期で大きく変わるので、幅のある数字として捉えてください。

項目目安備考
賃貸の初期費用家賃の4.5〜6か月分敷金・礼金・仲介手数料・前家賃・保証料など
引っ越し費用(二人分)同一市内で5〜10万円程度2〜3月の繁忙期は倍近くになることもある
家具・家電の購入10〜30万円程度どちらかの持ち物を活かせれば大きく下がる
火災保険料2年で1.5〜2.5万円程度契約時に加入を求められるのが一般的

※ いずれも一般的な目安です。物件・地域・時期によって実際の金額は変動します。

引っ越し費用で見落とされがちなのが、二人が別々の住所から荷物を運ぶ場合の扱いです。引っ越し業者の見積もりは、原則として一つの積込場所から一つの届け先へ運ぶことを前提にしています。二か所から積む場合は追加料金になるか、二件分の契約として扱われるのが一般的です。同じ日にまとめたいなら、見積もりの段階で「二か所から積みたい」と明確に伝えてください。後から言うと当日の作業が組み替えられません。

なお、標準引越運送約款では、依頼者側の都合で解約・延期する場合の手数料の上限が定められています。前々日までは無料、前日は見積運賃の10パーセント以内、当日は20パーセント以内が上限とされています(実際の扱いは業者ごとの約款によります)。日程が動きそうなら、早めに連絡するほど負担は小さくなります。

生活費の分担は、割合よりも「何を誰が払うか」を項目単位で決めるほうが揉めません。家賃は折半、光熱費はA、食費はB、というように固定するやり方です。

生活費の分け方には、完全折半、収入比で按分、項目ごとに担当を分ける、共同口座に一定額ずつ入れる、といったやり方があります。どれが正解ということはありませんが、収入差が大きい場合に機械的な折半を続けると、収入が少ない側の不満が溜まりやすいのは事実です。私は、共同口座に毎月決まった額を入れて、そこから家賃と光熱費を払う方式を採っている人が、いちばん揉めずに続いている印象を持っています。

そして、関係が終わったときの扱いです。婚姻していない同棲は法律上の夫婦ではないため、離婚に関する民法の規定(財産分与など)が当然に適用されるわけではありません。事実婚(内縁)と認められる関係については一部の規定が準用されると判断された裁判例もありますが、単に一緒に住んでいたというだけで当然にそうなるわけではない、というのが一般的な理解です。個別の事情によるので、争いになりそうなら弁護士など専門家に相談してください。

現実的な備えとしては、誰が買ったものかを分かるようにしておくこと、そして契約名義人でない側が出て行く場合と、名義人が出て行く場合の両方を想定しておくことの二つです。後者はやっかいで、名義人が出て行って残る側が住み続けたいなら、契約者の変更(貸主の承諾が必要)か、契約し直しになります。貸主が認めない場合は、残る側も退去せざるを得ません。ここは二人の合意だけでは決められない部分です。

同棲の引っ越しまとめ|決めてから部屋を探す

同棲の引っ越しについて整理してきました。全体を通していちばん伝えたいのは、順序の話です。部屋を探してから条件を詰めるのではなく、条件を決めてから部屋を探す。これだけで、後から起きる問題のかなりの部分は防げます。

物件選びでは、二人入居可であることの確認が出発点です。単身者向けの物件に無断で二人で住むのは契約違反にあたり、是正を求められることがあります。間取りは1LDKが最も選ばれますが、在宅勤務や生活時間帯のずれがあるなら、2DK以上で一人になれる場所を確保したほうが長続きします。専有面積は40〜50平方メートル程度が一つの目安です。

契約は、単独名義+同居人届出が実務上いちばん多い形です。家賃の支払義務を貸主に対して負うのは契約者だけなので、名義をどちらにするかは「別れたらどちらが残るか」まで含めて決めてください。重要事項説明には、同居する側も同席させてもらうことをお勧めします。

同棲の引っ越しで揉める原因は、ほぼ「決める前に部屋を決めた」ことに集約されます。家賃上限・費用分担・契約名義・解消時の扱い、この四つが先です。

費用は、賃貸の初期費用が家賃の4.5〜6か月分、引っ越しが同一市内の二人分で5〜10万円程度、家具家電が10〜30万円程度というのが目安です。二か所から荷物を積む場合は追加料金になるのが一般的なので、見積もりの段階で伝えてください。生活費は割合を決めるより、項目ごとに担当を固定するほうが運用が楽です。

関係が終わったときについては、婚姻していない同棲に離婚時の財産分与の規定が当然に及ぶわけではない、という点を押さえておいてください。だからこそ、購入したものの記録を残しておくこと、名義人が出て行く場合の段取りを想像しておくことが備えになります。縁起でもない話に見えて、実はこれが二人にとっていちばん公平な準備です。

よくある質問

同棲する場合、契約名義はどちらにすべきですか?

収入が安定していて審査に通りやすい側を契約者にするのが一般的ですが、それだけで決めないほうがいいです。家賃の支払義務を貸主に対して負うのは契約者だけであり、関係が終わったときにその部屋に住み続けやすいのも契約者側です。「別れたらどちらが残るか」まで想定して決めてください。

単身者向けの物件に、内緒で二人で住んでも大丈夫ですか?

契約違反になります。賃貸借契約には入居者の人数や範囲が定められていることが多く、無断での同居が判明した場合、是正を求められたり、程度によっては契約解除の理由とされることもあります。必ず「二人入居可」「ルームシェア可」の物件を選んでください。

別々の家から一つの新居へ引っ越す場合、料金はどうなりますか?

引っ越しの見積もりは一つの積込場所を前提にしているため、二か所から積む場合は追加料金になるか、二件分の契約として扱われるのが一般的です。同日にまとめたい場合は、見積もりの段階で二か所から積みたいことを伝えてください。後からの申し出は当日の作業に組み込めないことがあります。

同棲を解消したとき、家賃や敷金はどう分けますか?

婚姻していない同棲には、離婚時の財産分与に関する民法の規定が当然に適用されるわけではありません。原則として、契約上の権利義務は契約者に帰属し、二人の間の精算は当事者の合意によることになります。誰がいくら負担したかを記録に残しておくこと、争いになりそうなら早めに専門家へ相談することをお勧めします。

同棲の引っ越しは、荷物を運ぶ作業であると同時に、二人の生活のルールを一度言葉にする機会でもあります。一緒に住み始めてしまえば、細かい取り決めを改めて話す場面はなかなか訪れません。だからこそ、部屋を決める前の数週間が、いちばん話しやすい時期です。

お金の話や、うまくいかなかったときの話を持ち出すのは気まずいものです。ただ、これを避けたまま契約に進んだ二人が、あとで同じ話をずっと重い状況で始めることになるのを、私は何度も見てきました。先に話しておけば、それは条件の確認で済みます。

物件情報を開く前に、二人でこの記事の最初のリストを一つずつ埋めてみてください。埋まらない項目があれば、それがいま話し合うべきことです。そこが片づいてから探し始めたほうが、結果的にいい部屋に早くたどり着けます。

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